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映画 父の秘密、定点撮影による視野角の外の“秘密”(ネタバレ)ENJOY!!

映画 父の秘密
20160420
映画カテゴリー:映画    ライター:F

観たい映画の基準として「カンヌ」や「ヴェネツィア」などのヨーロッパの大きな映画祭で評価されているものを選ぶようにしています。

ヨーロッパで作成される映画は、劇中の説明が少なく、音楽や効果音もかなり控えめ、もしくは音楽が無いことも多く、スペクタクルな印象に作りません。これに因り、内容の本質に鑑賞者を向かわせるような作りになり、そういう部分が好きで、選んで観るようにしています。

で、第65回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でグランプリを受賞したこの作品「父の秘密」。以前から気にはなっていたものの、なかなか手が伸びずでいたのですが、鑑賞しましたので感想文を作成いたしました。

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まずは予告編とあらすじから

Wikipediaより引用、結末も含まれます)

料理人のロベルトは、最愛の妻ルシアを事故で亡くしたショックから立ち直れずにいたが、再出発のために高校生の娘アレハンドラとともに、プエルト・バヤルタ(英語版)からメキシコシティに 移り住む。しかし、喪失感が癒えることはなく、仕事を急に辞めたり、些細なことから街中で喧嘩をしたりするなど、自暴自棄となっていた。一方、アレハンド ラは、転校先の学校に馴染み始めた矢先、友人の1人に招かれた別荘でクラスメイトたちと騒いだ末に酔った勢いでクラスの人気者ホセと、彼がスマホで撮影し ているのを知りつつも、関係を持ってしまう。翌日、その動画が学校中に配信されると、アレハンドラはいじめの対象となってしまう。いじめはエスカレートす る一方となるが、自分のことで精一杯の父ロベルトを気遣うアレハンドラは、いじめの事実をひた隠しにし、母親の代わりを務めようとする。そんな中、臨海学校に参加したアレハンドラはバスルームに閉じ込められ、クラスメートのハビエルにレイプされる。さらに海岸でのばか騒ぎの後に、男子生徒に尿を浴びせかけられたアレハンドラは身体を洗うために海に入れられるが、そのまま姿を消してしまう。翌朝、アレハンドラがいなくなったことに気付いた教師から連絡を受け たロベルトは激しいショックを受ける。そして、何者かによって届けられたDVDに収録されていた動画で、アレハンドラがいじめられるようになった原因を 知ったロベルトは、原因を作ったホセをはじめとするクラスメートらの責任を追及しようとするが、彼らが未成年であることから思うに任せず、怒りを募らせて いく。懸命の捜索活動が続けられるものの、アレハンドラは見つからなかったが、実は彼女は生きていた。得意の泳ぎで海岸に辿り着くと、そのままバヤルタに行き、姿を隠していたのである。しかし、それを知らないロベルトは、怒りに任せて誘拐したホセを後ろ手に縛り、アレハンドラが姿を消した海にボートで連れ出して投げ捨てる。

定点撮影を多用した表現

映画 父の秘密

劇中では「定点撮影」による映像が多用されています。冒頭、修理を終えた車を運転し、道路の真ん中に唐突に乗り捨てるシーンがありますが、後部座席から運転席、フロントガラス方面に向かって映し出された、固定の映像で表現されています。この間、父親が車を運転していますが、このカメラ以外の視点がありませんので、不安な印象を受けます。

他にも、バースデーケーキを顔中に塗りたくられるイジメのシーンでも定点で、まるでイジメを傍観しているクラスメートの視点のごとく、映像が続きます。

映画 父の秘密

そしてオープニングの映像に呼応するように、こちらは正面を向いた父親の船の運転を定点で写しながら、幕を閉じます。このエンディングのシーンでは船にカメラが固定されているため、表情を崩さない父荒い波対照的で、不安を煽ります

父の“秘密”、娘の“秘密”

冒頭の車を乗り捨てるシーンに始まり、職場を急に辞めるシーンやラストシーンに見られるように、父は妻の死後、自分をコントロールできなくなっています。これが唯一の娘にも言えない父の秘密です。車を乗り捨てたことやお店を辞めたことをごまかしていることから伺えます。

映画 父の秘密

一方、マリファナの吸引や学校でのイジメを父に言い出せない、娘の秘密もあります。

視野角とその外

お互いにとって唯一の家族であり、夕食を共にするぐらい仲のいい2人にも、お互い言い出せない秘密があります。このお互い顔を合わせている部分(見えているもの)と秘密(見えていないもの)が定点撮影の視野角(見えているもの)とその外の世界(見えていないもの)を表現しているように感じられ、技法と表現がマッチし、セリフや映像説明を超えた、感覚に直接伝える、伝わる内容だったと思います。

こういうところが評価に値してるかと思いました。


映画 父の秘密

凄惨なイジメのシーンが多々あるので、どうしても目が行きがちですが、父親の振る舞いや、壊れた関係性、そのすべてが監督の言う「主題は暴力」であるとともに、それを定点撮影で客観視することで、その視野角の外にも当然同じ「暴力」があるということがわかります。

それはとても残酷な事実です。

そして原題「After Lucia」は妻(Lucia)亡き後、の意と光(Lucia)の無い世界のダブルミーニングとなっており、光の無い世界(残酷な事実)をリアルな日常を題材に表現した良作でした。

興味がありましたら、ぜひ。眠くなりますよ。

Memo

父の秘密(After Lucia)

http://lucia.ayapro.ne.jp/

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