北野映画といえば「キタノブルー」と評される、じめっとした湿度と狂気、孤独を感じさせる初期の表現が有名です。
北野映画は割と好きな方なので、初期の代表作「ソナチネ」や「HANA-BI」をはじめ、近年のヒット作「アウトレイジ」まで一応すべて観てきました。
そんな初期のキタノブルーとは正反対のからっからに乾いたジジイの皮膚のような狂気?「龍三と七人の子分たち」をレンタルDVDで鑑賞しましたので、感想を書きます!
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かつてヤクザの組長を務めた龍三は息子・龍平のもとで隠居生活を過ごしているが、ヤクザの息子と白い眼で見られていた過去から家庭の中でも窮屈な生活を送っている。連休に龍平が妻の実家へ帰省、留守を預かる最中に半グレ京浜連合からオレオレ詐欺の電話がかかる。示談金が揃えられない龍三は元子分のマサと詫びとして指つめを行おうとし受取人は恐れをなして逃げ出す。その夜、かつての仲間だったモキチも京浜連合とトラブルを起こし、マル暴の刑事村上から彼らの存在を知った三人はかつてのヤクザ仲間、敵対した組長達と暴力団『一龍会』を結成し京浜連合と抗争を開始する。
往年のツービートの漫才のような毒っ気のあるコメディ映画です。北野映画でコメディと言えば「みんな~やってるか!」と「監督・ばんざい!」になりますかね。
この2作、そんなにはまらなかったので、どうかなーというところからの鑑賞になりました。
この映画、主演の平均年齢がなんと72歳なんだそう。とにかくジジイが頻繁に画面に映ります。引退したヤクザが家で鬱陶しがられたり、老人ホームや病院のお世話になっていたり、生活保護を受けての団地暮らしだったり…。
そんなジジイのひとり、龍三(藤竜也)がオレオレ詐欺に遭いかけたことをきっかけに、昔の仲間で集まって組を結成します。
この集合シーンがほんとによぼよぼでおいぼれで…。そんなジジイがとってもキュート!
またこれを同窓会と勘違いした学校の同級生も集まってしまうのですが、なんと先生も来るとのこと!すれ違い、一瞬登場するのですが、点滴を引きながら歩く100歳超えの先生はほんとギリギリ生存してる様相。ここけっこうツボでした。
「早撃ちのマック」(品川徹)はスティーブ・マックイーンにあこが、病床なのにチャカを振り回し、ライダースの革ジャンを着用した、狂ったジジイ。「ステッキのイチゾウ」(樋浦勉)はそれこそ座頭市のような仕込み杖を携帯し、突き刺したその先にはしけもく。
みんな特技を持ったヤクザだったんですね。でもその特技が今となってはどうしようもないおじいちゃんって感じになってます。
これが最後のドタバタで爆発するんですね。
その最後のドタバタとは、先に殺されてしまった「はばかりのモキチ」(中尾彬)の死体とともに、半グレの本拠地へ攻め込んでいくのですが、みんな何故か一斉にこの死体に攻撃!死体だからリアクションこそないものの、胸は弾痕だらけ、後頭部は「五寸釘のヒデ」(伊藤幸純)の釘だらけ…。
これは北野映画というよりビートたけしのコント色が強く出ているシーンの一つですね。
で最後には半グレは黒塗りのセダンに乗って逃げていくわけですが、これを一龍会の面々は路線バスをジャックして追いかけるんですねー!
狭い商店街で露店をなぎ倒してのカーチェイスです。その緊迫感の無さったら!
古くは「その男、凶暴につき」で裸足の犯人を車で追い掛け回すシーン、「3-4X10月」のトレーラーで突っ込むシーン、「BROTHER」での車の中での戦い、近年ですと「アウトレイジ ビヨンド」のカーチェイスなど、結構車のシーン多いですよね。
他にも、飼ってるジュウシマツを焼き鳥にして食べちゃったり、街宣車で通勤してしまったり、くすっと笑えるシーンが満載です。
何も考えずに観られる映画になってます。
ブログを書くにあたって、いろいろ人のブログを見てると、北野映画をずっと見てきた人たちからは評価が高いですね!
要はジジイたちに明日が無いから、生を感じる、みたいな内容ですが。僕はまだその境地に達してません。ギラギラした、生きるか死ぬかの緊張感を欲してます。若気の至りでしょうか。
「アウトレイジ」、「アウトレイジ ビヨンド」と緊張感のある映画の後にこれなので、監督としての振り幅はさすがですね!
また、「みんな~やってるか!」、「監督・ばんざい!」ほど、めちゃくちゃ感が無かったので、北野映画のコメディの中では観やすい方だと思います。
もうベテラン監督だし、あの若いころの尖った、それこそ「キタノブルー」全開だった頃の、センスばりばりの一本も観たいですね。
死ぬまでに、なんとか「あの夏、一番静かな海」や「ソナチネ」、「菊次郎の夏」でもいいなあ、あの感じが観たいなあ。
それこそ「キッズリターン」ですね。
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